姪っ子の住んでいる和歌山県日高川町では先の台風12号で大規模な河川氾濫が起きて死者・行方不明者4名、全半壊家屋100棟、床上浸水・床下浸水200棟以上を出し、田畑の流失も被害も甚大であった。姪っ子の家でもカーネーションや蜜柑畑の被害を被った。
ただこの河川氾濫、単純な豪雨災害 ではなく「人災」ではないかとの声が上がり、AERA9月26日号が取材している。今回氾濫したのは日高川という川であるが、上流部に椿山ダムという県営多目的ダムがある。このダムは1953年の紀州大水害(死者・行方不明者1046人)を教訓として造られたダムである。今回の台風12号は速度が遅く、8月30日午後からの雨が紀伊半島に大雨を降らすことが予測されていたにも関わらず事前放流をせずに、9月2日午前まで発電のための毎秒28トンの通常放流を続け、それ以後徐々に洪水調整として放流量を増やしたが、毎秒1000トンを超える本格放流は9月2日午後1時過ぎの大雨・洪水警報が出されてから半日後の3日未明からだった。しかし流入稜の増加に耐えられず、3日23時以降の放流量は一気に3000トン、一時は4000トンに迫る急激な放流で日高川は氾濫し、集落を襲った。
ではなぜ事前放流しなかったのかとの問いに、管理者の県河川課は「事前放流は、ダム操作規則で定められていないためできない。川が氾濫したのはダムへの流入量が調整能力を超えていたためと考える」と答えているが、発電目的を含む多目的ダムの場合(水力発電所は関電が所有)、運用効率を重視することから、発電に必要な水位を保てなくことを恐れて事前放流を定めていないことが多いと専門家は指摘している。
紀州大水害を教訓として造られたダムが、その運用規則に於いて再度の災害を防げなかった、否、防ごうとしなかったとしたら、一体何のためのダムなのであろうか。専門家は原子力ムラと似た官民一体の河川ムラがダム運用の改善を妨げていると指摘している。利権でしか動かない国、それが正に日本の現状であるとしか思えない。