もう2〜3週間前になるが、川の対岸を一頭の若い牡鹿が頭から片方の角をぶら下げて狂ったような歩き方をしていた。角が春になって落ちかかっているのだが上手く落ちず、鬱陶しくて何とか落とそうとしているらしい。丁度外出せねばならない時だったので、帰って来てからダリと鹿の足跡を追った。まだ雪が残っている頃で鹿の足跡は林の中をあちらこちら歩き回っているのだが、落ちている木の枝が全て角に見えてとてもじゃないけれど探せる状況ではなかった。その後、雪が融けてからも一度探したが見つけられなかった。
今日は暖かいのどかな春の日。子供達とダリ散歩がてらフキノトウを採りに行った。沢山のフキノトウを採った帰り、先日角を探した林から100mほど離れた牧草地を歩いていたら目の前に角が一本落ちていた。大きさからいって先日の鹿のものかもしれない。若い牡の角のようだが結構な重さである。こんな重い物を2本も頭に付けているのだからご苦労なことだ。ま、人間同様男や牡というのは生きていくのもなかなか大変なのである。これから暫くは軽くなった頭で「あぁ、楽ちん」と思う牡鹿もいるのだろうか。それとも暫くは刀を質屋に入れた武士、企業の肩書きを失った定年者の心境なのであろうかと馬鹿な想像をする。
それにしても毎日のダリ散歩や山登りで鹿に出会うことも多いのだが、鹿の角を拾ったのは初めてでる。そこらじゅうに鹿がいるのだからもっと見つかりそうなものなのだが。