今朝もマイナスであったが、快晴で少しは暖かくなりそう。朝のダリ散歩で『蘭ちゃん』に会う。蘭ちゃんはヨシジくんの所に新しく来た黒柴の子犬である。なかなか凛々しい顔付きである。今朝は比較的元気なダリであるが、嬉しそうにじゃれる蘭ちゃんにダリはどちらかというと迷惑そうである。
もう1ヶ月ほど前に切られた隣の庭の『青木』と、ここいらの人が呼ぶ木が、真っ赤な樹液を垂らしている。隣のオッサンは木を切る時、いつも根元から切らずに変な高さで切る。毎朝この赤い樹液を見ては痛ましい気分となる。
帰ってアトリエに入って直ぐ、2階で「ドン!」という大きな音と共に家が揺れた。2階にいたムスメに「どうした?」と聞くが分からぬと言う。慌てて外に出てみたら大きな鳥が地面で暴れていたが、1~2分で動かなくなる。可哀相に雌のキジが家に衝突して首の骨を折ったらしい。一瞬今夜のメニューが頭をよぎるが、目を閉じたキジの顔があまりにも神々しいというか美しく、自分で食べる気が失せる。かといって庭に墓を掘ろうにも我が家の庭は石が多くてとても掘れぬ。浅く掘れば狐にやられるし、やはりここはきちんと成仏してもらうには人様に、それもきちんと道理をわきまえた人様に食べて頂くこととして、ナカムラさんに差し上げることにする。
ナカムラさんだが、我が家の庭先の川を3kmほど遡った所にもう20数年前から住んでいるお洒落なご夫婦である。多分そろそろ80に手が届くお歳だと思うが、とにかく若々しく田舎での生活を楽しまれている。広い庭先にはセギが流れて、岩魚が泳いでいる。ツリーハウスがあり、ベンチがあり、ピザやパン用の薪窯、燻製窯、趣味の陶芸小屋まである。全て手作りである。この他ラジコン飛行機、釣り、鉄砲と多趣味でもある。こう書くと「何だ、金持ちの優雅な田舎生活か」と思われるかもしれないが、3kmも遡れば我が家と気温も雪の量も違うのである。山奥の一軒家で冬を越すにはそれだけの精神力と肉体が必要なのである。いつも凄いなと思う。
さすがに最近は足腰が弱ったと鉄砲は置いたのだが、彼なら成仏させて下さるとお届けすると、自家製岩魚の燻製と物々交換して下さる。
「ムスコさんはどうされましたか?」と聞かれ昨年からの経緯をお話すると大喜びして下さる。そうそうナカムラさんはJAZZも大好きなのである。5〜6年前だったか突然カミサンに「ピアノを弾いたことはないが、JAZZピアノを弾きたい。しいてはどんなピアノを買ったら良いでしょうか?」と言って来られ、カミサンと松本の楽器屋を回っていた。『枯葉』一曲だけでも弾けるようになりたいと猛練習された様子で、ある時「聴いてもらえますか」といらっしゃった。寒い時期で、黒皮のロング・コートで颯爽と現れて弾いた『枯葉』は正にJAZZだった。テクニックなんぞは関係ない、これぞJAZZなのである。カッコイイのである。あんな風に歳をとれたらと思う。