デザインで四苦八苦

次の仕事のクライアントへのデザイン提示。OKが出てちょっとホッとする。
あとは1/5で描いたデザイン画を原寸大で描き、型紙を作り、ガラスをカットして組み立てるのだが、果たして立ち仕事に膝がどれくらいの時間持つのか、ちょと不安。
ま、竣工が11月末なので、以前の半分の仕事量でも十二分に間に合う計算ではある。

前にも書いたがステンド・グラスに使用する色付き板ガラスのほぼ全てを海外メーカーに依存しているのであるが、数年前から製造過程で出る排ガスの環境基準が世界的に厳しくなり、廃業や合併や環境基準の厳しくない国への工場移転、ガラスの色や種類によっては廃盤となるガラスが非常に多くなって来ている。おまけにコロナ禍で輸入に時間が掛かってもいるし、この円安であるからとんでもなく高くなっている。

ワタクシは40年以上前からステンドでオマンマを得てきた古い人間であるから、どうしても今はなきドイツのメーカーであったフィッシャー・ガラスのテクスチャーや色や透明度を基準にデザインを考える癖が抜けない。で、確かこんな色味のガラスがあった筈とサンプルガラスやカタログやネット写真を頼りに探すが廃盤になっていることも多い。おまけにどういうわけかワタクシの好きなガラスほど廃盤になっているように思えて仕方ない。

ワタクシは名古屋と大阪と東京のガラス問屋と取引があるが、遠くて特に小作品の場合、そうそうは見に行けない。で、担当者に電話で問い合わせて近い色合いのガラスを送ってもらったら、こちらの思っていたガラスとニュアンスが全く違ったガラスが届いたこともある。若い担当者に「フィッシャーの何番のガラスのような・・・」と言ってもフィッシャーなんて知らない世代なのだからこれは仕方ないのであるが・・・

先日同業者のニシダさんと電話で話したのだが「東京の某問屋に行ったところ、ガラス棚がスカスカで酷いもんだよ」とのこと。「問屋もみんな廃業するんじゃないかと思えるほど」とのこと。またステンドを作るにはガラスの他に鉛のレールや真鍮や銅などの金属を使うのだが、銅テープや半田など値段が1.5倍になっているとのこと。戦争が起これば金属の値段は上がるし、この円安であるし・・・

デザインするにも苦労する。頭の中で「この部分はあのガラス」と考えても、この前まであったガラスが廃盤になっていることも多い。
また元々ステンドグラス制作というのは、元板の中の流れや色味の良い部分を使うのであるから、元板の一部分の使用となってしまう。ガラスによっては元板の1/2や1/4を買うことも出来るが、「このガラスのこの部分だけ買う」というわけにはいかない。
昔だったら「その内に残った部分は別の作品に使うだろうから・・・」と簡単に言えたが、70歳ともなると老い先も考えねばならない。

数年前にワタクシとはデザイン性が全く違うが、美しい作品を作っていた方が亡くなり、彼の友人何人かでアトリエの片付けをしたそうだが、引き取り手の無いガラスの処分に本当に困ったという話を聞いたことがある。そうだろうなと思う。ガラスの値段は元板(60cm X90cm程度)は1万から5万円以上するが、運搬は重ねて運ぶことが出来ないし、大体が3mm前後の厚みであるから割れやすいし、傷を付けられないので乱暴に扱うことが出来ない。その上重いし、置いておくにも場所を取る。

断捨離を考えていてはステンドは出来ないし・・・かと言って自分の在庫しているガラスだけではデザインが限られてしまうし・・・

かつてある木工作家が言っていたけれど「鍛造作家なんて良いよな!重いけれど割れないし、錆びたって使えるし、大体間違って切っても溶接出来るし・・・それに鉄なんて値段の上下があるとはいえ木やガラスに比べたら安いもんだし・・・」と。

かくしてデザインするにもなかなか悩ましいのである・・・

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